マーケティング 市場調査

テレビ視聴率の調査方法とテレビ広告はなぜ高いのか

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2015年5月9日の19時00分~19時56分に放送している日本テレビ(日テレ)「天才!志村どうぶつ園」で、ほんの1-2分ほど日テレの内部が放送波に乗ってましたね。

そこで、世界の果てまでイッテQ! の部署や、天才!志村どうぶつ園の部署の入り口に、◯月◯日放送分視聴率16.5%などといった張り紙があったのですけど、気が付きましたか??

このテレビ視聴率って、だれが、どの様に測定しているのかを知っている人は、あまりいません。まぁ、業界の人は知っているとは思いますけどね^^

テレビ視聴率とは

テレビ視聴率の謎を解くまえに、そもそもテレビ視聴率ってなんなのか?
これがわからないと、次に進めないわけですよ。

視聴率を測定している会社は、現在1962年に設立されビデオリサーチ社の独占となっています。

しかし、その実態は株式出資者をみれば分かる通り、身内が独占的に視聴率を調査しているのですね。

その出資者の中味はというと、ご存知電通が1/3、残りを東京在局キー局5社とキー局を中心としたテレビ局20社、それに放送機器などを納入している東芝とか、電通と同じ広告代理店の博報堂などが出資してできた会社です。

で、その使命たる視聴率については、ビデオリサーチ社の視聴率調査について(視聴率ハンドブック)に掲載されています。

視聴率は、テレビの番組やCMがどのくらいの世帯や人々に見られているかを示すひとつの指標です。(中略)また、視聴率データは、広告出稿社(者)、テレビ局、広告会社が広告取引をする際に、テレビの媒体力や広告効果を測るひとつの指標として利用されています。

つまるところ、この視聴率を使って商売をしようという企みがあるということです。

テレビ媒体(メディア)を広告として使うことにより、自社商品を広く知らしめて、販売増を目指す。

テレビ局は、CMや番組提供社に広告枠を売って儲ける!

これが最たる理由ですね。

実はこのビデオリサーチ社が設立される1年前の1961年にアメリカの視聴率測定会社、ニールセンが日本進出をしているのです。

しかし、ニールセンは日本的な様々な理由により撤退を余儀なくされ、2000年3月に日本から撤退をしています。ここのところは、岸田 徹氏の【岸田コラム】にくわしく書かれていますので参照してください。

視聴率調査の概略

視聴率を測定するには、どの様にして◯%といっているのでしょうか?

まず視聴率には、世帯視聴率と個人視聴率があります。
例えば、関東を例にあげると(2015年3月現在)

世帯数:18,132,000世帯 1800万世帯です!
個人数:40,643,000人  4000万人ですね。

この数字が基準となって、視聴率は計算されています。

例えば、NHKの朝ドラ「まれ」の視聴率を考えてみましょう。

世帯視聴率10%というと、180万世帯でNHKの朝ドラ「まれ」が見られていたという結果ですね。

個人視聴率8%というと、320万人がNHKの朝ドラ「まれ」を視聴していたことになります。

ではこの、180万世帯とか、320万人とかいう数字はどこからやってきたのでしょう??

サンプリング手法を使って、計算されています。
正確にはランダムサンプリング「系統抽出法」というものです。
もっと詳しい解説を読みたい方は ⇒ こちら

じゃぁ、関東1800万世帯のサンプル数は、どのくらいかご存じですか??

これが、なんと 600世帯 です!

サンプル数は、全世帯数の0.003%です。 個人視聴率は、0.0015% です。

サンプルに選ばれた世帯にはビデオリサーチ社から視聴率を測る機械が設置され、この機械からビデオリサーチ社に送信されるデータを基に、視聴率が計算されています。

この視聴率調査がどの様に行われているかは、日テレのサイトの、「視聴率の調査方法は?」のページにくわしく書かれていますので、ご興味のある方はどうぞ!

サンプル数が、極端に少ないと感じられたあなた!

どのくらいの誤差があると感じられますか??

5%、20% 35%・・・・・

ビデオリサーチ社の解説によると、

視聴率が10%での、考慮すべき標本誤差は±2.4%です。

ということは、視聴率10%といった時には、7.6%~12.4%の中にあるということができます。

まぁ、このくらいの誤差を容認するかしないかは、その数字を使う方、つまりテレビ局側の考え方ひとつです。

テレビ局から見た視聴率

テレビ局では、視聴率で一喜一憂しています。

視聴率が二桁に乗るか乗らないかで、その番組に出演している方々の評価もずいぶんと変わるとか・・・
しかしです、上のビデオリサーチの誤差を考えると、7-8%はひょっとすると10%かも知れないのです。ここのところは、ほんとに厳しい業界ですね!

テレビ業界で云われる「ゴールデンタイム」19:00~21:00までの2時間をこう呼んでいます。

理由は番組を見られる率が、1日の内で最も高くなる時間帯だからです。
総務省情報通信政策研究所が平成26年9月に発表した
「平成25年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」からその実態をグラフにすると次のようになります。

<主なメディアの時間帯別行為者率>【平日】
平日

<主なメディアの時間帯別行為者率>【休日】
休日の行為

ここで、平日を見ると、朝の7時台、昼の12時台、そして夜の20-21時台にピークがあることが一目瞭然で分かります。

テレビ局としては、この時間帯、特に夜の時間帯を狙って自局の看板番組をぶつけてきます。そして、視聴率を稼ぐのですね!

このグラフから、とっても興味深いのは、朝9時台から夕方17時台まで、インターネットがテレビを上回っているということです。ここの時間帯はやはり業務時間ですのでテレビは見れないけどインターネットは見ているということが如実に現れています。

休日のグラフを見るとインターネットは、朝10時台と14~16時台に少しテレビを上回っていることと考えると、平日のインターネットを行なっているというのは、いかに業務にインターネットが入り込んでいるのかも、とても良く分かりますね!

テレビ広告の仕組み

テレビ局は、広告収入でテレビ放送を運用しています。

テレビ局にとって視聴率は、その番組がいくらで売れるかのバロメーターとも言えるのです。

例えば、フジテレビの黄金期 1990年台~2000年初頭の月曜日夜9時のドラマ、通称「月9」と呼んでいますね。
最近は低迷していますけど、過去どのくらいの視聴率を稼いでいたかを見てみると

視聴率

軒並み30%以上の視聴率を連発してたのですね。

最近の例では、TBSが2013年7月期で放送した「半澤直樹」が印象的ですよね。
その視聴率の変移を話ごとに歴代のヒットドラマ、日テレの「家政婦のミタ」TBSの「ビューティフルライフ」とくらべてみてみましょう。

半澤直樹視聴率

このように、各局が力を入れたドラマは、回を重ねるごとに視聴率もどんどん上がっていきます。
少しでも話題になれば、最近は番宣といって通常のCMスポット枠に自局の番組宣伝をいれてくるのが常態化しています。

そこには、テレビ局の視聴率至上主義があったりするんですね。
なぜ、テレビ局はそこまで視聴率にこだわるのか?

広告料金はどのように計算されるのか?

そこで、視聴率と広告料金の関係を見ていきましょう。
視聴率を換金します^^

例えば、2001年1月期にヒットした木村拓哉主演の「HERO」は36.8%の視聴率をたたき出しています。

関東圏でいくと、世帯視聴率37%とは1800万世帯が対象ですから

666万世帯

が視聴していたという結果です。

また個人視聴率にしてみると、4,000万人が対象で37%ですから

1,480万人

が視聴していた計算です。

これを広告料金に置き換えると、1視聴に対して10円の広告費がかかるとすると、広告料金は、

世帯視聴率で 666万x10円=6,660万円
個人視聴率で、1,480万x10円=1億4800万円

という計算が成り立つわけです。
広告にこういった値段をつけても良いともいえます。

1%違うと、18万世帯、40万人の差となりそれぞれ、
180万円と400万円の広告料金に差額が出る
ということになるわけです。理論的にはですけどね^^

なので、テレビ局は視聴率に躍起になっているわけで、視聴率至上主義みたいなものができてしまうのです。

こういう背景で、冒頭に記載したように、

「世界の果てまでイッテQ! の部署や、天才!志村どうぶつ園の部署の入り口に、◯月◯日放送分視聴率16.5%などといった張り紙があったのです。」

なんてことになるんです。

このように広告料金は番組視聴率にほぼ比例して、上がっていくと言えるので、普通の中小企業ではテレビ広告の費用を捻出するのは大変です!
つまり、大企業を中心としたテレビ広告という構図が描かれているのです。

このあたり、近年ではテレビ視聴率の低迷で、広告料も下がってきたようですね。
その証拠に、この頃テレビを見ていると、あまり名前も知らないさまざまな企業のテレビ広告を見るようになってきました。

そして、費用対効果がよく見え、しかも比較的安価なインターネット広告へ広告主側も、広告する媒体を変えてきています。

ここ数年のテレビ局の実態を見ると、経営的にも大変な事態になってきています。

テレビ視聴率調査とテレビ局広告のまとめ

以上のように、TV局の視聴率は大変少ない数のサンプリングで成り立っています。
これが良いか悪いかではなく、この数字をどの様にテレビ局が使うのかというところが、重要じゃないかと思うのです。

最近のテレビ番組は、お笑い芸人+よくわからないタレントをひな壇に座らせて、いろいろ話をさせるバラエティー番組がとても多いと感じるのはボクだけではないですよね。

インターネットの台頭で、テレビ局は広告収入が減り、この種のバラエティー番組にしておくと、低予算でも視聴率をそこそこ稼げるという目論見がテレビ局側にもあるのです。

そろそろテレビ局も視聴率至上主義から脱却して、テレビ局として本来の使命を果たしてほしいものです。

BPO(放送倫理・番組向上機構)は、放送倫理基本網領(NHK 民放連)のなかで、放送の使命を次のように定義しています。

放送は、その活動を通じて、福祉の増進、文化の向上、教育・教養の進展、産業・経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命とする。

さて、これからのテレビどうなるのでしょうね?

 

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コメント

  1. 伊達 より:

    価値観の多様化に伴う21世紀の情報化社会に於いての物事の価値判断は多面的観る必要が有る、日本の世帯数は凡そ5100万世帯位で人口は1.27億人とするならば、有料TV放送はNHK・スカパー・WOWOW・CATV等でNHKの加入世帯は地デヂで40%衛生で37%はTVの普及率から有り得ない数字で、動画配信会社の参入等で、TV視聴も変わる時代に於いては、無料民放放送はCMだらけの細切れ放送で全く見ない人も居ると思われる、先日のフィギュアのNHK杯の視聴率が確か地デヂ放送で22%とかで加入世帯が40%で視聴率が22%も可笑しな話、サンプリング調査の誤差も2010年前後以降は未知数で当てに成らない、日本の放送業界は米国より20年近く遅れて居る。

    1. idegene より:

      伊達さま
      コメントありがとうございます。
      数字を見ていくと、そんな矛盾も出てくるようになりますね。
      現在の視聴率も、統計的にはあっているかもしれませんけど、
      仲間同士でやっているので、信ぴょう性は低いと思います。

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