朝の報道バラエティ番組などによく見られる、YouTubeなどの動画サイトから持ってきた動画を恥も外聞もなく流しているテレビ。
しかも民放のキー局で流すとは、「これ如何に!」と言わざるを得ません。
なぜ、こんなことが起きているのでしょうか?
それは、すべて視聴率最優先の現在のテレビの在り方に問題があるからです。
なぜ、ネットでアップされているネット動画がテレビに採用されるのか?
ネットに溢れている動画が、なぜテレビにどんどん流れるようになったのかを、考える前に、テレビの特性を少し説明します。
通称横長テレビと云われた時代
現在電気店で販売さいれているテレビは、すべて画角が16:9になっています。
でも以前は、と云ってもまだ10年も経っていませんけど、テレビの画面の画角は4:3だったんです。
なぜ、HDの16:9の横長になったのか?
これは国策で、HD(ハイディフィニション)TVを普及するためと世界的にテレビがHDになったからです。
国策は、世界の放送方式で日本と同様の方式を採用する国や地域が増えてくれば、それだけ日本の家電業界が輸出で潤うという施策です。
テレビメーカーは、少ない種類で大量に生産できるので原価を落として、利益が増すという構図が作れるので、業界全体が活性化され日本が昔のように潤うことを目論んだのです。
ところが、実際にはテレビの世界統一規格ができたわけでもなく、国や地域がそれぞれの思惑でHDTVを推進したので、アナログ時代よりもひどくなってしまったのです。
世界の放送方式の推移
現在の地上波デジタル放送(地デジ)が放送される前の世界のテレビ放送方式は、NTSC(日本・アメリカ)、PAL(欧州全般)、SECAM(フランス・ロシアなど)が主要3方式でした。
しかもそれぞれの互換がありません。つまり、日本のテレビをイギリスやドイツに持って行っても、全く見れないということが起きていました。
電源コンセントの形状が違うのと同じことで、日本で買ったテレビをイギリスに持って行っても映りません。
イギリス・アメリカが1998年にスタートした、現在の地上波デジタル放送は、現在40カ国以上の国や地域で放送されています。
しかし、その実態はまたしても4つの放送規格に分割されてしまったのです。
その4つとは、
- 日本方式
- ヨーロッパ方式
- アメリカ方式
- 中国方式
の4つの方式です。
で、世界の地デジ放送規格分布はつぎのとおりです。クリックで拡大します。
(2014年5月現在. 総務省作成. 世界の地上デジタルテレビ放送方式より引用)
世界の放送方式が4つに分割されたのも、それぞれの国と地域の施策・思惑の現れです。
ネット動画なら再生は世界統一
地デジという国策が立ち入ったところでは、世界統一ができなかったのですが、ネット世界では、皆さんご存知のようにYouTubeをはじめ動画共有サイトの映像がどのコンピュータからも閲覧できますね。
再生だけを取り上げると、世界統一規格とも言えます。
もともと、ネットの世界ではデファクトスタンダードが存在しやすい環境にあるので、ひとつのフォーマットに右へ倣えで、加速度的に普及してきます。
実態は、さまざまなフォーマットが存在しています。
しかし、そんなことを気にしなくても見え方として統一されているように見えますよね。これは、裏でソフトウエアで互換をとっているのです。
ここにテレビ局が目をつけたのです。
しかも、最近インターネット上に溢れている動画は、HD規格で撮影されているので、それをダウンロードしてきてテレビ放送規格に変換してもデジタル変換なので、ほとんど劣化しません。
ということで、テレビ局が制作している番組の画質と近い画質ということもあり、TV番組中にYouTubeなどのネット動画を流しても、あまり違和感なく視聴者は受け入れちゃうのです。
昔はテレビ局で視聴者が制作した映像を流すということは、ほとんどありませんでした。
それは画質がテレビ放送に比べてあまりに低画質だったこと、また上述したとおり世界ではさまざまな放送規格があり、例えば欧州の番組を流すのも煩雑な変換を伴っていたのです。
しかし、現在は家庭用のビデオしかり、イチガンのデジカメでも放送に耐えうるに十分な画質を得ることができます。
テレビ局では、ここにも目をつけどんどん自分たちの放送番組の中で、ネット動画を使い出したのです。
制作費もかからず、視聴率が稼げるなんて一石二鳥ですもんね!
テレビは視聴率を稼げる番組素材が欲しい
テレビ視聴率の調査方法とテレビ広告はなぜ高いのかという記事でご紹介したとおり、テレビ局はなんとしても高視聴率を取りたい、イコール広告料金が上がる、そしてテレビ局の売上が上がり、利益につながるという、旧態依然としたビジネスモデルを継承しています。
なので、なりふり構わず視聴率が取れるものなら、何でもありで放送に流れます。
そこで、テレビ業界がYouTubeなどの世界の動画共有サイトに、白羽の矢を立てたのです。
テレビ局が欲しい映像は、YouTubeを探せばたくさん転がっています。
今や、出勤するとYouTubeを一日中見て、視聴率が取れそうな動画を探す担当者もいると聞いています。
これって、本末転倒ですよね。
だって、放送局の使命は、自分たちが制作した番組、お客様(視聴者)に有益な情報を速攻で流すことにあるのです。
TBSテレビ2013 年度入社式での石原社長訓話では、
放送局の大きな使命は、報道機関として、公平、公正な立場で正確な情報を伝えるとともに、社会の問題点を深く掘り下げ「健全な民主主義社会の維持」に努めることです。
と、掲載されています。
YouTubeの世界の動画をテレビで流すことが、『報道機関として、公平、公正な立場で正確な情報を伝えるとともに、社会の問題点を深く掘り下げ「健全な民主主義社会の維持」に努めること』になるのでしょうか?
いささか疑問でしょう!
ボクが以前地方のケーブルテレビ局に営業に回っていたころ感じたことは、ケーブルテレビ局を初め全国のテレビ局は、放送する素材に飢えているということです。
ケーブルテレビ局では、1週間同じ番組を流しているという実態もあります。
これは番組を見逃した人が見るため、という大義名分もありますけど、やはり番組を作るだけの費用と工数がないということが一番の原因のようです。
これは地方のケーブルテレビ局にとどまらず、東京のキー局でも同様ですね。
なので、YouTubeで何千万回と再生されて、だれが見ても「おぉ~すげぇ~!」とか「癒されるぅ」「かわいい!」なんていうネット動画をあたかも自分の局の映像のように、お茶の間にダダ漏れ状態にしているのです。
なぜかって、視聴率が採れるからです!
テレビ局が取得している視聴率の推移は1秒単位で、他局の視聴率も秒単位で見れるようになっています。
何時何分何秒に、どんな映像を放送していたのか、だれがどんな台本を読んでいたのかまで詳細にわかる仕組みになっています。
出演タレント別の視聴率も秒単位で一目瞭然で読み取れるのです!
なので、世界中から視聴率が取れるネット動画をいろいろ集めてきて、自分たちの番組の中で放送しているのが実態です。
これって、完全に「他人のふんどしで、相撲をとっている」としか表現できませんよね!
ネット動画の放送は、そろそろやめて欲しい
テレビ局の視聴率至上主義も、そろそろ卒業して、本来のテレビ局の在り方で、如何にして経営をしていけばよいのかを、本気で考えて欲しいですね。
そして、旧態依然とした広告収入に頼ったビジネスモデルも限界に来ているのではないでしょうか。
面白いから、視聴率取れるからという本末転倒のネット動画のテレビ放送たれ流しは、もうやめて欲しいし、テレビ局の使命を全うして、視聴者にやさしい、役に立つ番組を作る取り組みをはじめて欲しいと切に思います。
参考資料:
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